浅草の新仲見世から横に入った道にある「餃子の王様」、知られていないわけでも、隠れているわけでもないが、ここで土産を買ったことがある人は結構地元人ばかりではないだろうか。

店で食べる餃子は小ぶりでパリッとした、ツマミに最適な美味しい餃子。ラー油は手作り自家製。

狭い店内でゆっくり食べていると、知った顔に会えることがしばしばある。定期的に足が向いてしまう店なのかもしれない。地元で愛されている店なのだ。

大量に作られた餃子は、店の3階にストックされているが、三社祭の夜には全て完売してしまう。翌日分まで残らず、祭りの打ち上げで食べつくされてしまうらしい。祭りの翌朝は、開店を遅らせて餃子を作っている…。

観光客は店内で餃子を食べても、土産に餃子は買わない。浅草土産に餃子は似合わないし、臭うし、何より他に、情緒ある観光土産がたくさんあるのだから。その方がいい。王様の土産餃子は、店で食べるものとは全くの別物で、店内食が美味しかったから土産にしたならば、たぶんガッカリしてしまうだろう。

家に着いた頃には、ベタっとくたびれた餃子になっている。味もベタっとして皮が主張してしまっている。正直、美味しくない!と感じるかもしれない。

しかし、これはこれでイイのだ。どこが?

餃子は“折り”に詰められている。プラスチックの容器ではない、会社帰りに酔っぱらったお父さんが、千鳥足で持ち帰る、昔ながらの薄い木製の折だ。懐かしく、なんだか幸せな気分になる。汗をかいて、中の餃子はヘナヘナだが、こっそり付いているラー油の姿がまたイイのだ。

自家製のラー油は油紙に包まれている。ビニールのパックではない、ポンポコポンのパチンコ玉のように包まれて、油紙をねじっただけで止められている、まるで昭和初期のようだ。創業は昭和29年だから初期ではないか…ともあれ風情がある。

いつまでも変わらずにある店、長年通う客、何代も続けて訪れる客に食べられる餃子。味+α、アルファは愛着のようなものか。試しに一度、店内で食して土産を持ち帰ってほしい。素朴だがコダワリのある、忘れられない土産が思い出に残るだろう。

数年前、久しぶりに行って驚いたのは、店横の小路が隅田川向こう岸のスカイツリーのシャッターポイントになっていたこと。小路というより隙間から、確かにスカイツリーが見えるのだが、誰がここから写真を撮ろうと思ったのか、不思議な雰囲気が漂っていた。観光客とは、本当にどこにでも出没するものなのだな。写真のついでに餃子もどうぞ。